小金井橋は小金井邑の地に傍て流るゝ所の玉川上水の素堀に架す故に此名あり
岸を夾む桜花は数千株の梢を並へ落英繽紛たり 開花の時此橋上より眺望すれは雪とちり雲とまかひて
一目千里前後尽る際をしらす 仍て都下の騒人遠を厭すしてこゝに遊賞するもの少なからす
橋頭酒を煖め茶を煮るの両三店あり 遊人或は憩ひ或は宿す
 
 春の夜は
   さくらにあけて
     しまひけり
          芭蕉

野村コメント:図会本文では「水源小川村より新橋の東、北千川上水の堰口まで凡そ
      一里あまり」が桜堤で、吉宗の命により植えられた桜は「一萬余株ありしとぞ」と書いている。
      「小金井橋春景」やこの図版で描かれている10m前後の桜の間隔で計算すると、「1里あまり」
      には多くて1千株である。小川村から四谷大木戸までで計算すると6千株程度になり、この図の
      文中の「数千株」の許容誤差に入る。しかし、この図の文中にある「一目千里」と同列の表現と
      受け止めるべきだろう。