錦袋圓
池の端仲町勧学屋大助是を製す
其始祖勧学坊了翁僧都一代蔵経建立の志願によりて
正保三年摂の勝尾寺をよひ和州長谷寺洛陽清水寺等の
大悲の尊前に参詣して指燈を燃し一篇の願書をこめ奉る
其翌年彼一指大に腫れて苦痛堪かたし
将に夢中肥前州興福禅刹の開山如定禅師錦袋の中より
一霊薬を取出して授けらるると見る夢さめて後速に彼薬を製して
服せしかは其指の病頓に愈ぬ
其後衆人の患者に用るに百人中百愈せすと云事なし
こゝに於て此地に店を開き万病錦袋圓と号 彼霊薬を製し鬻て
竟に其価の余計を以 一切経建立の料に充て志願の全き事を
得たりといへり