道灌山聴虫
 文月の末を最中としてとりわき名にしほふ虫塚の辺を奇絶とす
 詞人吟客こゝに来りて終夜その清音を珎重す
 中にも鐘児の音は勝て艶しく莎鶏紡織娘のあはれなるに金琵琶の振捨かたく
 思はす有明の月を待出たるも一興とやいはん

 まくり手に
  すゝむしさかす
   浅茅かな
          其角