庵崎
 俗間請地秋葉権現の辺をしか唱ふれとも定かならす。
 須崎より請地秋葉の近傍まての間酒肉店(りょうり)多くおのおの○(竹冠に禦:いけす)をかまへ鯉魚を畜(かふ)
 酒客おほくここに宴飲す
 中にも葛西太郎といへるは葛西三郎清重の遠裔といひ伝ふれとも是非をしらす
 むさしやといふは昔麦飯はかりを売たりしかは麦計といふ
 ここにて麦斗(はくと)と唱へたりしもいまはむさしやとのみよひて麦斗と号せしをしる人まれになりぬ

 野村コメント:風俗ではない景色図で付注なしは珍しい。
 長秋は本文で、庵崎は鐘ヶ淵の北ではないかと言っており、雪旦と意見が異なっている。
 店の名を挙げての説明は、宣伝なのか批判なのか。よくわからない。
 加えて、次の「牛御前宮・長命寺」の右側に葛西太郎が登場している。