中川釣鱚
春鱚は三月の末より四月に入りて盛なり
春釣と云は寛文の頃南総伍大力の船頭仁兵衛をはしめとす  岩崎兵太夫といふ人是に継
いま岩崎流といふは則この人に始りて是より後春鱚を釣る事世に盛なりしと云
秋鱚は八月の末より九月なかはを節とす  然れとも十月に至り寒気にうつれは沖に出るか故川釣に幸なし
漁人海に産するを白鱚と呼川にあるを青鱚と唱ふ
又鱚に大小の差あり  当歳は腹白く五六寸なるを二歳とす  腹すこしく黄色を帯びて背通り黒みあり
七寸より八寸までを三歳と呼  腹黄色にして赤みを帯背の通り黒し  九寸以上を鼻曲と号く  鱗あらし
尺に越ゆるを寒風と唱るよし漁人の説なり