モチノキとヒイラギは、植物分類では「もちのき科」と「もくせい科」で花の姿や芳香の有無で歴然とした違いがある。用途として、前者は樹皮がトリモチ(黐)の原材料でかつ幹は印材等に使われるものの自生が主体で後者は分枝性が良く生け垣として防犯や害獣対策として管理されることが多い。 また漢字では、前者は上記から「黐木(樹)」と、後者は葉を掴むと疼痛を伴うことから「疼木」と書かれていた。わが国では江戸時代になると黐は難読難筆のため一般には使われずかな書きに、疼木は柊(中国では椎の一種)が当てられるようになった。 モチノキは赤い核果が観賞用になるのだが、放置すると10mほどにまで高木化するので庭木として手が掛かる。そのため同じ科属で一回り小さいソヨゴが散在する赤い核果の上品さとともに庭木として使われるようになった。わが国ではこの野生でない黐を指して「冬青(トウセイ)」と呼ぶようになった。 少なくとも図会の時代までに「もちのき科」の樹種を示す場合に「柊」を使っている例は見当たらない。少なくとも旧平川沿いには「ヒイラギザカ」は、見当たらない。この限りで町名主齋藤長秋は冬青が黐木の一種であることを知っていたために柊木ももちのきを表していると勘違いしてしまったのではないだろうか。 その後文明開化と共に「西洋ヒイラギ」が伝来している。核果がモチノキほどには塊にならずソヨゴほどには散在でなくかつ色が同じ科属の中で最も鮮やかな赤い光沢をもつこの樹種は「もくせい科」ではなく「もちのき科」であるが葉の形状はヒイラギそっくりなのでこう呼ばれ、後に正式和名も「ヒイラギモチ」とされている。 中国ではいつからからは不明だが現在ではもちのき科全体を冬青とし(「黐」は廃字?)、その前に樹種の違いを示す単語を付けて区別しているようである。西洋ヒイラギは「欧州冬青」と書かれている。 |