明長寺は、「幻の染め」と言われる辻が花染めの本物(大坂夏の陣の武功に応えて家康が贈った小袖)が預け証文とともに保管されていて話題になった。辻が花染めとは戦国時代にぱっと流行した技法とその技法固有のデザインである。何せ技法が伝承されなかったので、「これこそが復元された辻が花染めである」と主張する染色家や研究者によって諸説入り乱れている。@絞り染めの一種である。A模様として草花を用いている。くらいが共通の合意事項で、古文書にある名称の「辻」の意味すらはっきりしていない。
 私は往時の模様が繰り返しになっているので、総模様としては幾何学的な配置であることを「辻」と表したのではないかと思う。きもの屋の宣伝には繰り返しのパターンになっていないものまであるが、後世に「20世紀末のバブル文化の反映」と言われそうな気がしている。