明治末期の東京大水害で谷中も浸水被害を受けた。しかし広域の雨水を受けての荒川や江戸川による水害と異なり、現在の都市水害と同様の流域の宅地化進行による短期的局所的なものであった。
　海までの下流が繁華街になっていたこの川を拡幅することは困難だったから、道灌山下から三河島、町屋を経て隅田川に至る幅10ｍほどの開渠を主体とした藍染川放水路が設けられた。現在の諏訪台と道灌山は一続きの台地であり、ここの間は隧道であった。
　放水路ができるとますます道灌山下から下流は川の役割を失い、どぶ川になった。さらに石神井川上流の開発で伏流水からの湧水（藍染川の水源）も次々と枯れて上流部も晴天が続けば干上がっていた。
　関東大震災後の都市計画で、流域の排水は下水道整備で十分であることが確認され、道灌山下から現西日暮里駅北までの藍染川放水路用地を活用して環状街路４号線の一部とすることが決定された。
　下水道ができた地区の藍染川放水路は暗渠化されて下水道に繋がれたり、埋め立てられたりした。不要になったトンネルは開削されて道路になり、道灌山通りと呼ばれるようになった。

　環状４号線は、環状線の中ではインパクトの低い道路で、ルートも滑らかでなく、未整備区間も残っていて道路管理上最もコマ切れになっている。東京オリンピックの際にも重視されなかった道灌山通りが現在の姿に整備されたのは、現東京メトロ千代田線がこの下に設けられた1969年のことである。