日本神話(古事記、日本書紀)では、天地開闢の後に天で7回にわたり、11柱の神が生じた。初めの3回は1柱ずつ、4回以降は男女2柱ずつとされている。 最後に天で生じたのが良く知られているイザナギ・イザナミの男女神である。この両神は混沌としている下界にオノコロ島を作って宮居を構えて夫婦神となり、次々と地上に豊穣をもたらす神々を産んだ。 では6回までに生まれた神は、何だったのか。神罰を恐れずに書けば、いわば神の試作品で初めの3回は男女の別のない神だった。4回、5回とそれぞれ男女の役割分担を示す神が生じ、6回めがオモダル・(アヤ)カシコネの男女神であった。 オモダル尊は、パートナーのカシコネ尊を見て「面(かおが)足りたり(整っている)」と愛情を示す言葉を発したが、カシコネ尊は「阿夜(あや)惶(かしこ)」と男神への畏敬の念が強すぎて夫婦にはなれなかった。 第六天神社とは、パーフェクトでなかったオモダル・カシコネ両神に親しみと配慮から6番目の天の神と名付けて祀ったもので、図会も祭神は面足尊、惶根尊なりと記している。 蛇足の雑学 最初に「アナニ(あら)ヤシエ(美しい)オトコヲ(男ですこと)」 とイザナギから愛を告げた結果産まれた神は、体形の定まらない蛭子(ヒルコ:恵比寿神)だった。以後女性からの愛の告白は慎むようになった。 ところが、神仏習合に伴って仏教の守護神のひとつ「第六天魔王」を祀ったのが第六天神社だという説をネットで見かけた。仏教の目的地の化楽天の上にあるのが第六天界で、ここに棲む悪魔が人の快楽への欲心を操って自分の快楽に転化するという術で人を堕落させており、釈迦も幾度となくこれによって修行を妨げられた。 その悪魔たちの王の第六天魔王が、釈迦が涅槃に入る際に表れて、守護神になることを申し出た。衆生安穏の真言は釈迦に認められたが飲食の供養は認められず、わだかまりを残して参列した。 という経緯からして、仏教界では要注意の守護神となっている。鳥越神社に大和武尊が勧請して祀ったのが始まりというここの第六天神社が、こんなややこしい仏教神を祭神とするはずがない。他の第六天神社は詳しくはないが、この説は明治以降の国家神道政策の中でイザナギ・イザナミに比較して完成度の低い神を整理するために流布されたものと思う。 蛇足の雑学 第六天界、魔王波洵(ハシャ)、神霊(手下の悪魔)などは、最近の魔界漫画や格闘技ゲームに登場しているので若い世代の方が詳しかったりする。 |