勝間田之 池者我知 蓮無 然言君之 鬚無如之/新田部親王
朽ちにたる くはなかりせば 勝間田の 昔の池と たれかみてまし/道済
池もふり 堤はくづれて 水もなし むべ勝間田に 鳥も居ざらん/肥後(二条天皇大后宮)
鳥も捨て 幾世経ぬらん 勝間田の 池にはいひの 跡だにもなし/範水
かつまたの 池の心は むなしくて 氷も水も 名のみなりけり/寂然
年を経て 何頼みけん 勝間田の 池に生ふてふ つれなしの花/詠人しらず
かつまたの 池も緑に みゆるかな 岸の柳の 色に任せて/顕仲
尋ね来て かつみるままに 勝間田の 花の陰こそ 立ちうかりけれ/為相
かつまたの 池にはいかに 杜若 水なしとてや にほはざるらん/慈鎮
勝間田の 池に浮寝の 床絶えて よそにぞすぐる 鴨の群鳥/慈鎮
下はより 氷もあらじ 降りつもる 雪のみ深き かつまたの池/家隆
勝間田の 池の氷も とけしより やすの浦とぞ 鳰鳥もなく/好忠
霜がれの 芦ばかりこそ かつまたの 池のしるしに 立ち残りけれ/大貳
水なしと 聞きてふりにし 勝間田の 池あらたむる 五月雨の頃/西行
かつまたの いけには何ぞ つれなしの 草のさてしも おひにける身よ/知家

注)
 蓮は、葉や花が茎がないまま水面に出ているので、「つれ(連)なし」と言われた。
 にお(鳰)はカイツブリのこと、蓮が生い茂るような池沼に棲みつくので、蓮とともに
絵や文に登場することが多い。

 良く読むと、万葉の時代から素晴らしすぎる風評と実態とはかけ離れたものだった
ようである。